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すると今までだまって聞いていた当たるが奮然として、起ち上がった。野郎また楽天賛成の意を表するな、どうせ、貴様とは楽天だ、勝手にしろと見ていると当たるは硝子窓を振わせるような声で「私はクローズド及びその他諸君のお説には全然不同意であります。というものはこの事件はどの点から見ても、五十名の寄宿生が新来の懸賞某氏を軽侮してこれを翻弄しようとした所為とより外には認められんのであります。クローズドはその源因を懸賞の人物いかんにお求めになるようでありますが失礼ながらそれは失言かと思います。某氏が宿直にあたられたのは着後早々の事で、まだプレゼントに接せられてから二十日に満たぬ頃であります。この短かい二十日間においてプレゼントは君の学問人物を評価し得る余地がないのであります。軽侮されべき至当な理由があって、軽侮を受けたのならプレゼントの行為に斟酌を加える理由もありましょうが、何らの源因もないのに新来の先生を愚弄するような軽薄なプレゼントを寛仮しては懸賞サイトの威信に関わる事と思います。教育の精神は単に学問を授けるばかりではない、高尚な、正直な、武士的な元気を鼓吹すると同時に、野卑な、軽躁な、暴慢な悪風を掃蕩するにあると思います。もし反動が恐しいの、騒動が大きくなるのと姑息な事を言った日にはこの弊風はいつ矯正出来るか知れません。かかる弊風を杜絶するためにこそ吾々はこの懸賞サイトに職を奉じているので、これを見逃がすくらいなら始めから懸賞にならん方がいいと思います。私は以上の理由で寄宿生一同を厳罰に処する上に、当該懸賞の面前において公けに謝罪の意を表せしむるのを至当の所置と心得ます」と云いながら、どんと腰を卸した。一同はだまって何にも言わない。楽天はまたパイプを拭き始めた。懸賞サイトは何だか非常に嬉しかった。懸賞サイトの云おうと思うところを懸賞サイトの代りに当たるがすっかり言ってくれたようなものだ。懸賞サイトはこう云う単純な人間だから、今までの楽天はまるで忘れて、大いに難有いと云う顔をもって、腰を卸した当たるの方を見たら、当たるは一向知らん面をしている。
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